どんな感じで社会をDXしていくか
今年タイトルのようなことで考えたことをまとめておきます。
データにできるものは約束事
デジタルデータ(以下、データと略す)は、基本的に人間が現実の物事をこう扱うと決めて、離散化・符号化し記録したもの。 音楽のデータは空気の周波数を数値にしたものだし、地球上のある場所を特定するために緯度経度は定義されている。 これらの約束事によって、私達は正確にデータを交換できて、どこでも音楽が聞けたり、様々な場所を目的地として設定できる。
お金、貨幣制度も、約束事そのもので、紙幣に価値があるとされるのも、発行元である国がその価値を保証しているから、買い物ができる。1 Amazonに注文して荷物が届くのも、〇〇県✗✗市△△ x-x-xというような住所が約束事として割当られているから。 経歴だって、ある学校を卒業したことやある企業に所属していたことを、しっかり証明するのは意外と手間がかかったりする。2 日本の国民であることはマイナンバーという12桁の数字で示せる、みたいなのも結局は約束事だ。
社会というのはそのほとんどが約束事で成りたち、現実に対して人間が勝手にラベリングしたり、制度化しているだけだったりする。今この文章を構成している文字だって、この形がこういう音であったり意味を示すということが特に物理的な現象として規定されているわけではない。人間同士のコミュニケーションによって継承されているだけだ。3
そして、そういう約束事そのものがデータにすべきものである。
現実の物質は素粒子あたりまで分解できて、その全ての位置をデータにしておけば過去の全てを記録できるようになるかもしれないけど、当然コストの問題があるのでそうはしない。
データにできるものは全てデータにしてしまった方が、色々とメリットが大きい。 買い物のレシートもデータになっていれば集計が楽だし、家計簿も自動的に作られるようになる。4 賃貸契約だって、紙の契約書を引っ張り出してどこに何が書いてあったかを探すよりは、全文検索できるほうが楽だ。 就職や転職でも、経歴にすべてそれらを証明する電子サインが付いていれば、チェックも手軽に済ませられるて経歴詐称の心配も減る。5
というわけで、まずは社会的な約束事や契約、制度化されたものをデータとして定義していけば、DXが進むと思われる。
しかし人は何かを食べないと生きていけない
約束事をデータにできたとしても、食事までデータにするわけにはいかない。 また、何かを着たり、建物の中に住んでいないと、環境からの影響で簡単に人間は弱ってしまう。 衣食住、いわゆる生存権を実現するために、データにできない部分はまだまだ多くある。
コロナ禍もあって、VRやメタバースといったことも少し流行っているけど、この辺の問題はあまり解決されていない。 IoTといっても、かなり限定的な範囲でおうちの中を便利にした程度だ。むしろ工場や工事現場のほうが進んでいるかもしれない。 UberEatsで食事を注文したとして、作っているのも人間だし、持ってきてくれるのだって人間だ。
現実を動かすためのロボット
いろんな会社がロボットを作っているが、球場で踊ったり、動作テストのための意地悪をされたり、ペットだったりといったところまでで、大多数の人間の生存に関わるところまで役に立っているとはいい難い。
問題は手なんだと思う。 道具を使うことはかなり人間が得意とすることだけれども、それは基本的に手を使う。 しかし、手は手だけで使えるわけではない。 手を使って何かをすることは、操作する対象を認識するための目や皮膚といった感覚情報や、過去にその対象を扱ったことのある経験の記憶などに下支えされている。6 そもそも人間のような手をもつロボットを作ること自体すら大変難しい。
そこでまずは手より脚、移動に特化したロボットを作ったほうが良いのではないか。 現実において、どこかに存在していることはとても重要で、いるべき場所にいないと必要なものは手に入らない。 生物の進化を辿っても、手が活用されるようになるのは最近で、脚、すなわち移動手段、どこかに移動できるということがまず大事だったように思う。7
もちろん、二足歩行にとても難しい技術だし、車の自動運転も難しい。 しかし、その難しさの多くは運ぶもの、つまり人間の移動手段としているためではないだろうか。 稀に地球の重要性と比較されるようほどの人間を安全に運ぶためには、とても慎重にならざるをえないからだ。 また、人間は重量物でもあり、平均して60kgほどになる。これだけの重量を運ぶのは中々難しい。
人を運ばない自動運転車と小さなコンテナ
そういうことを考えると、自動運転車やドローンには荷物だけ運ばせるのが良いということになる。 2リットル6本入のダンボールを運ぶのは人間にとっては大変な作業だが、人間自体の重量と比べれば1/5程度で済む。
更に、その荷物の入れ物を規格化し、小さなコンテナに入れて運ぶようにするのが、もっとも現実的なロボットの活用方法に思える。 小さなコンテナは、どこまでも複雑である現実を規格化するための手段として、とても有効だ。8 今後、5Gがちゃんと普及すれば、それなりの範囲で高速な回線が使えるようになるから、ロボットをリモート操縦することで、配達員自身が移動しないでもそこそこの荷物の移動が可能になるだろうし、自動運転車でも命の危険が無い荷物なら運べる。
現状、Amazonでもある程度規格化されたダンボールに入れられて配達される。それをもうちょっと拡張するようなことになる。 この規格化は宅配業者がやるか、小売業者がやるかはわからない。 しかし、家に配達されるものだけでなく、商店での商品やいろんな施設での消耗品の補充でも使えるだろう。 電子キーも付けられれば、宅配ボックスの代わりにもなる。
まとめ
以上のことをまとめると
- 約束事をまずデータ化し利便性を増す
- 生物に近いロボットは難しいので、移動(というか運搬)に特化したロボットを作る
- 小さなコンテナによって現実を規格化し、その運搬をロボットに任せる
基本的には人間は協力することでこれだけ文明を発達させてきた。9 ただ、どこかで誰かが作ったものを使うには、別の場所に運ぶ必要がある。 その移動・運搬がスムーズになれば、人類はもっと協力できるようになる。
データで扱える部分も実は同じ方針で、OSSや様々なメディアのデータも独占されることなくオープンな状態のほうが上手く発展しているように見える。 そのためには、やはり規格化や標準化といったことが必要なのは間違いない。 また、人間の肉体の代替となるようなロボットを作る10よりは、まとめたように進めていくのが現実的なんじゃないだろうか、ということを考えていた。
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とはいえ、その保証の信頼性が低いと価値を失うので、人々が信頼しないと価値は生まれない。 ↩
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なので、学歴詐称をしたり、GAFAに「いた」みたいなことで信用を生み出そうとする人がいる。 ↩
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音の種類によって印象が変わったり、文字に使われやすい形に自然の影響があるとかないとかいう話は少しあったりするようではあるが。 ↩
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家庭に複数人いると一気に管理が難しくなるのでそんなに単純な問題ではないのだが。 ↩
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ちょいと危険だと思うのは良い経歴が更に良い経歴を産んで格差が生まれやすくなること。 ↩
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モラベックのパラドックスというらしい。 ↩
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植物は基本的には移動しないから足よりも前と言えるかもしれない。 ↩
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火、言葉、文字、手、道具、様々な要因があるけど多くは協力のために使われる。もちろん運搬も協力行為と言える。 ↩
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AI関連でいうと、エンターテイメントだと多くが人型ロボットになってしまうのは悲しいことだ。もっとフチコマみたいな非人間型ロボットが活躍すべきだと思う。 ↩